広島高等裁判所 昭和27年(う)480号 判決
弁護人の論旨第一・二点(被告人山本九市関係についての事実誤認の主張)について。
訴訟記録及び当審に於ける事実取調の結果を精査するに所論の海底電線は当初被告人浜先勇の所有船定海丸の錨に引つかかり、それが海底電線であることは同人の潜水によつて確認したのであるが、偶々その一端が既に他の何者かによつて切断されていたのを奇貨として之を窃取せんことを企て被告人山本九市に於て僚船を現場に集結し、その賛同を得て、いずれもその引揚を手伝い遂に当日夜半に及び七百九十四米を引揚げ之を四分して定海丸を除く他の僚船(龍昇丸、武田丸、荘信丸、山洋丸)に積み込んで柿浦海岸まで運び帰つたものであることが認められる。
然し右海底電線は何の部分も切断されていない、現に使用中のものと知りつゝ切断窃取したと認むべき証拠は見当らないが、たとえその一端は切断されていたとしても他端はいまだ切断されていないもので、一般にスクラツプと称せられる電線の断片とは異るものであること、之を窃取するときは厳重に処罰されるものであることも被告人は充分承知していたものであることが認められる。(被告人等の検察官の面前に於ける供述調書参照)
之によつて見るとたとえ一方が切断されていたとしても他方が長く続いた海底電線として敷設された状態のまゝであつたと認められるから、いまだ管理者の占有を離れた占有離脱物乃至は漂流物とも認定し難いから、被告人等の窃取の犯意を認めるに充分である。